こんにちは!アパレル社員です。
今回は「ブランド(メーカー)と縫製工場の関係」について紹介します。
みなさんそれぞれに好きなファッションブランドってありますよね?
HPを覗けば本社の住所や外観の綺麗なビルが映っています。
当たり前ですが、この綺麗な本社では衣類やファッションアイテムを生産していません。
ではどこで生産しているのか?
答えは国内や海外にある縫製工場です。
今回はこの縫製工場とブランド(メーカー)の関係について解説していきます。
本記事は以下のような人におすすめです。
・将来アパレル業界への就職を考えている学生さん。
・アパレル業界の仕組みがしりたい人。
・ファッションや服が好きな人。
それではご覧ください。
目次
生産するのはブランドではなく「工場」
私が社会人1年目の頃、セレクトショップ勤務時代のある商品についての先輩とのやり取りです。
お高めな単価のダウンジャケットについてのやり取りで今でもしっかり覚えています。
知っている人からすると「無知すぎんだろ!」と思うかもしれませんが、本当にあった話です。。。(笑)
ブランドAってめっちゃいいよね!
はい!かっこいいし品質良いし値段が高くても買っちゃいますわ~
でもこのブランドBってブランドAと同じ工場で縫製してるのに20,000円も安いってすごくね?あんまり有名なブランドではないけど。
ん?同じ工場?AとBが?どういう意味っすかパイセン!!
お前知らなかったの?ブランドは違うけどこの2つの商品を縫製している工場は一緒だよ。
当時の私と同じく「どういう意味っすか?」状態の人のために解説すると、アパレル業界ではブランドが違っても生産を請け負っている縫製工場が一緒ということがあります。
これにはアパレル業界の流れも関係しているのですが、まずブランドを持つアパレルメーカーの本社では商品のデザイン、仕様書やパターンの作成、納期や品質の管理、営業が売り込み事務員が注文を受けますが、店頭に並ぶ大量生産品の縫製は行いません。
この大量生産品ですが、2つの生産方法に分かれそれぞれの場所で生産されます。
①自社工場で生産する。
②協力工場に生産を委託する。
①の場合は自社工場なので自社が経営する工場です。(もしくは自社資本の別会社)
「自社製品を生産すること」が仕事であり、生産スケジュール管理も自社で行うので融通も利きますし、上記に挙げたような、実は他社ブランドと同じ工場なんていうことは有り得ません。
②の場合は協力工場といって依頼したメーカーとは全くの別会社が運営する工場です。
「依頼された製品を生産をすること」が仕事であり、全世界のアパレルメーカーから依頼があるので、日本のブランドAとアメリカのブランドBが同じ縫製工場で生産したものを自社ブランド商品として売っているということが起こるわけです。
つまり冒頭で紹介したブランドAとブランドBはブランドを展開するメーカー(企業)は違いますが、自社で企画、デザインした商品を同じ協力工場に生産委託したということです。
見た目のデザインや使用している生地、付属、ブランド力に違いはあれどそれらを生産しているのは同じ縫製工場の同じ工員なのです。
ブランドが違っても工場が同じになる理由
低価格と大量生産で勝負する工場
国が発展していくための産業の過程で、第一次産業、第二次産業、第三次産業があります。
衣類の縫製は第二次産業に分類されますが、インフラの整っている先進国では人件費の高騰や若者の縫製業離れ、土地不足の問題などがあり、国内縫製自体が減少傾向にあります。
そんな中、新興国では「これから第二次産業である縫製業をガンガンやっていくぞ!」という国がまだ多くあり、低賃金、若者の台頭、土地や設備への投資など先進国よりも大量生産品を縫製をするための環境が整っています。
最近ではさらに低コストを求め、先進国がアフリカにも投資をしていますね。
ここまで書けばお分かりではないでしょうか?
日本を含む先進国のブランドやメーカーは国内で大量に縫製したくても中々できないのです。
特に低価格や50万~100万点以上の大量生産をしなければならないブランドやメーカーは絶対に不可能です。
そうなると中国、東南アジア、バングラデシュなどの縫製工場に委託せざるを得ません。
ここで生産委託を請け負う協力工場が登場します。
この協力工場は世界中のありとあらゆるメーカーの協力工場という場合が多いので、ブランド、メーカーが違っても縫製工場が同じという現象が起きます。
高い技術と付加価値で勝負する工場
もう一つは「そこでしか生産できない」という技術の高さや独自設備のある縫製工場の存在です。
ブランド、メーカーは大量生産に入る前に必ずサンプルを作ります。
サンプルは数枚程度なので少々難しい仕様もクリアして縫製できます。
ただ、デザインを優先しすぎた場合に、大量生産では仕上がりにバラ付きがでる部分や、工程が複雑すぎて生産性が上がらないという問題点が見つかる場合があります。
そんな時に縫製技術や生産設備の関係で、この問題点をクリアし、大量生産ができるのは「アメリカのA工場」しかないという事になると、同じような問題に直面したブランド、メーカーは必ず「アメリカのA工場」という協力工場に生産を委託します。
また高い品質や生産能力を誇る縫製工場には高価格帯で勝負するブランド、メーカーがこぞって生産委託しています。
日本でいうと国産、「Made in Japan」を売りにしているブランドやメーカーは海外の協力工場に委託すればもっと安くできるところを、あえて品質の良い国産にこだわり、付加価値を付け、海外生産を得意とするブランドとの差別化を図ります。
また欧米の老舗工場、や歴史が深い工場など、ファッションマニアの心をくすぐる海外の協力工場を使用し、そこに付加価値を見出すブランドやメーカーもあります。
これは上記に挙げた「低価格と大量生産」とは全く異なった理由ですが、同じようにブランド、メーカーが違っても縫製工場が同じという現象が起きます。
周りを気にしなくていい自社工場
上記で挙げた他社ブランドと同じ縫製工場なんて嫌だという場合は、自社工場での縫製しかありません。
自社工場のメリットとデメリットを挙げてみます。
自社工場のメリット
・競合他社に情報が漏れない。
・細かいところまで品質管理が行き届く。
・ライン管理が自分たちでできるので納期管理に融通が利く。
・工賃の決定権がある。
自社工場のデメリット
・設立に莫大な費用がかかる。
・工場設備費、管理費などの維持費がかかる。
・工場に仕事を与え続けるため常に膨大な数量の製品を作り続けなければならない。
・海外の場合は工員が他の工場に引き抜かれないためにメリットを与え続けなければならない。
アパレル社員的まとめ
ブランド(メーカー)と工場について紹介しましたがこれだけは覚えておくべきというポイントをまとめておきます。
・ブランド、メーカーは大量生産品を縫製工場で縫製している。
・縫製工場は自社管理の自社工場と生産を委託する別会社の協力工場に分かれる。
・協力工場の場合は自社以外に他メーカーのブランド品も縫製している。
・低コストと大量生産を売りとする工場と高い技術やそこで生産することによる付加価値を売りにする工場がある。
・自社工場は自社管理のため融通が利くが、莫大なコストが必要になる。
ちなみに最近では工場の中にデザイン、企画ができる部門があり、メーカーの手助けをしたり、ファクトリーブランドとして商品化して販売している工場もあります。
私は企画、生産管理で年に数回海外(主に中国)へ行きますが、協力工場に行くと世界中の色々なブランドの商品を目にします。
もちろんしっかりとした工場に行けばお高めなブランド品、規模が小さい工場に行けば量販向けや安価な無名ブランド品などを縫製しているところを見かけます。
業界では当たり前の話ですが、私はアパレル業界に就職するまで全く知らなった話です。
この機会に覚えておくと将来役立ちますよ。
ちなみに冒頭で紹介した私と先輩のやり取りの中で、ブランドAとブランドBの単価に20,000円の差がありますが、これは使用する生地、デザインと仕様、使用する装飾付属、ブランド力を総合して売価で約20,000円の差が出たと考えてください。