生地の染色堅牢度とは?【衣類の色落ちトラブルを未然に防ぐための数々の試験を紹介!】

数々のカラフルな衣類が外に干されている JOB

 

アパレル社員
アパレル社員

こんにちは!アパレル社員です。

今回は「生地の染色堅牢度と試験」について紹介します。

 

 

アパレル業界でも、特に商品を作る立場の人でないとあまり聞きなれない言葉だと思います。

正直私も販売員時代は知らなかったです。

 

例えばお店でかっこいいネイビーのシャツを購入して着用と洗濯を3回繰り返したところ、

「あれ?買った時より色がだいぶ薄くなってる!」

なんてことになった経験はないでしょうか?

 

濃い色のシャツだったし、色が落ちたのかな?となんとなく理解はしつつも、まだ3回しか着ていないなのにな。。。と思う気持ちもあるはずです。

 

アパレルメーカーでは商品を企画する際、こういった色落ちのトラブルを防ぐため生地の事前試験を必ず行っています。

 

今回は業界では当たり前ですが、あまり知られていない「色によるトラブル」を未然に防ぐための生地試験について紹介します。

紹介に入る前に本記事はこのような人におすすめです。

 

・将来アパレル業界への就職を考えている学生さん。

・アパレル業界への転職を考えている社会人さん。

・入社したてのアパレル業界の新人さん。

・購入した衣類で色落ちなどの失敗をしたことがある人。

それではご覧ください。

色が変わる原因

カラフルな絵具

 

まずはなぜ色が変わってしまうのか。ですが、

衣類を構成する布地は基本的に染料によってそれぞれの色に染まっています。

 

着用中、洗濯中、保管中のあらゆる原因により、染料が落ちたり、化学変化を起こしたりすることで色の変化が起きてしまいます。

 

代表的な色が変わる原因をまとめました。

・家庭洗濯やドライクリーニングによる色落ち

・漂白剤や蛍光増白剤による色落ち

・太陽光による変色

・摩擦による色落ち

・汗による変色、色落ち

・他の衣類などからの移染

・醤油やソースなどのシミ etc…

醤油やソースのシミは誰もが一度は経験したことがあるのではないでしょうか。

染色堅牢度

 

上記のような問題が起きないよう商品企画の際に必ず、生地の染色堅牢性というものを調べます。

染色堅牢性とは日光、汗、摩擦、洗濯、漂白などの外的作用に対して「染色物が色を維持しようとする抵抗性」のことです。

またその程度(度合い)のことを染色堅牢度といいます。

この染色堅牢度はJIS規格(日本工業規格)で規定されています。

 

つまり商品に使用する本番同様の生地でJIS規格に沿って検査し、商品化した際に問題がないかを調べておくということです。

試験項目

洗濯機と乾燥機が並んでいる

 

JISで規定されている染色堅牢度試験には幾つか種類があります。

試験の種類ごとに変退色と汚染の2種類の検査を行います。

変退色は色が変わること、汚染は別の生地を汚してしまう色移りのことを指します。

※ただし耐光試験は変退色のみ、摩擦試験は汚染のみの1種類で判定します。

 

判定は等級になっていて1~5級で表し、1級が最も低く、5級が最も高い評価になります。

※ただし耐光試験のみ8級が最も高い評価になります。

耐光堅牢度

光に対する染色堅牢性を測る試験です。

実際の日光による耐光試験、紫外線キセノンアーク灯光、カーボンアーク灯光という種類があります。

一般的には紫外線キセノンアーク灯光で試験することが多いです。

洗濯堅牢度試験

洗濯に対する染色堅牢性を測る試験です。

石鹸によるA法、合成洗剤によるB~E法があり、試験目的と試験布の繊維の種類により1つを選びます。

汗堅牢度試験

汗に対する染色堅牢性を測る試験です。

酸性人工汗液とアルカリ性人工汗液を用いる方法があります。

摩擦堅牢度試験

摩擦に対する染色堅牢性を測る試験です。

乾いた状態の生地を使う乾燥試験と、濡らした状態の生地を使う湿潤試験があります。

どちらも摩擦試験機Ⅰ形(クロックメーター)と摩擦試験機Ⅱ形(学振形)による方法があります。

ドライクリーニング堅牢度試験

ドライクリーニングに対する染色堅牢性を測る試験です。

有機溶剤の種類、界面活性剤および水の添加の有無、ステンレス剛球の有無を組み合わによりA-1、A-2、B-1、B-2法の4種類があります。

塩素処理水堅牢度試験

塩素を含んだ水に対する染色堅牢性を測る試験です。

水道水レベル、プールの水レベル、それ以上の量を含んだ塩素水を使ったA~D法の4種類があります。

窒素酸化堅牢度試験

酸化窒素ガスに対する染色堅牢性を測る試験です。

※酸化窒素ガスは車の排気ガスや冬場の石油ストーブから発生するガスです。

弱試験と強試験の2種類があります。

汗耐光堅牢度試験

汗と光の複合作用に対する染色堅牢性を測る試験です。

人工汗液と紫外線カーボンアーク灯光、キセノンアーク灯光を組み合わせた試験方法があります。

試験布を試験容器に入れるA法とガラス板、アクリル板に張り付けるB法があります。

またJISとは別にATTS法と言われるものもがあります。

ATTS法の人工汗液はJISと違った成分で、JISに比べ実際の着用中に近い状態を作り出せます。

こちらには弱試験と強試験があり、強試験は主にスポーツや作業服用途で用いられます。

色泣き試験

色泣きに対する染色堅牢度を測る試験です。

主に濃淡切り替え品やボーダーなどのプリント生地を使った製品に適用されます。

 

色泣きとは、洗濯や雨で濡れた際に、白や淡色部分に赤や濃色部分の染料が移り、白や淡色部分を別の色に染めてしまう現象です。濃色と淡色の切り替えになっているバイカラーや濃色と淡色のボーダープリントなどに起こりやすいです。

 

昇華堅牢度試験

昇華移染に対する染色堅牢度を測る試験です。

主に分散染料を使用するポリエステルや濃淡プリントを施した製品に適用されます。

 

昇華移染とは濃色を染めている部分の染料が高温で気体に変化し、淡色部分に移り別の色に染めてしまう現象です。ポリエステルを染める際に使用される分散染料で起こりやすく、倉庫での保管中や、東南アジアからのコンテナ船での輸送中の高温多湿などの悪条件が重なった際に起こることがあります。

試験機関

 

一般財団法人カケンテストセンター

一般財団法人ボーケン品質評価機構

一般財団法人日本繊維製品品質技術センター(QTEC)

などに試験を依頼し、試験結果を提出いただくのが一般的です。

試験実施場所は日本のみならず、中国、ベトナム、バングラデシュなどの、昨今生産拠点となっている海外にもあるのでタイムリーな対応も可能です。

アパレル社員的まとめ

 

アパレル社員
アパレル社員

染色堅牢度と試験について紹介しましたが、これだけは覚えておくべきというポイントをまとめておきます。

 

・衣類の色が変わってしまうのは着用中、洗濯、保管方法などの外的要因が関係している。

・染色堅牢性とは日光、摩擦、洗濯などの外的作用に対する染色物の色の抵抗性のことである。

・染色堅牢度とは染色堅牢性の程度(度合い)のことである。

・アパレルメーカーは商品企画の段階で必ず染色堅牢度試験を行っている。

・一般的な染色堅牢度試験には耐光、洗濯、汗、摩擦、ドライクリーニング、塩素処理水、窒素酸化物、汗対抗試験がある。

 

これらの試験データを保管しておくことで、万が一商品の色に関するクレームがあった場合に、

クレーム品の状態、着用頻度と着用状況、洗濯方法、保管状況などの情報と、生地の染色堅牢度試験データを照らし合わせると、なぜこのようなクレームが発生したのか推測ができるようになります。

 

またこの試験データに基づき、品質表示や取り扱い表示を作成することで、消費者へ適切な取り扱い方法を促しクレームを未然に防ぐことができます。

 

商品を企画、購入する上で気を付けてほしい「生地の染色堅牢度」この機会にぜひ覚えてください。

 

ちなみに生地の物性トラブルについてのこちらの記事も必見です。

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